今回は立岩俊之先生、遠藤健司先生らの論文を読みましたのでそのまとめになります。
はじめに
股関節が脊椎骨盤アライメントに与える影響は、冠状面において、変形性股関節症により下肢短縮がある場合、脊椎側彎にてアライメントが代償されるが脊椎への負担が発生する。
脊椎に可撓性が乏しい場合は体幹の重心性は患側に偏位し、脊椎、股関節のいずれにも影響を与える可能性がある。
矢状面では、寛骨臼形成不全による変形性股関節症においては寛骨臼の前方被覆は小さく、応力集中の回避や疼痛の防御的反応のために骨盤は前傾する。
変形に伴う股関節屈曲拘縮も骨盤前傾に作用し、腰椎は前彎を増強することにより代償する。
腰椎前彎の増強により椎間関節の亜脱臼や椎間孔の狭小などが生じ腰痛や根障害の原因となる。
しかし、変形性股関節症の発症は多因子素因であるため、その脊椎骨盤アライメントは多様である。
股関節と脊椎-骨盤アライメントの関係
冠状面において、体幹の重心線であるC7 plumb lineと仙骨の中心からの鉛直線であるcenter of sacral vertical line(CSVL)が一致するのが理想的なアライメントである。
矢状面においては、脊椎アライメントの形状は、C7椎体からの重心性と仙骨後隅角までの距離であるSVA、腰椎前弯角(LL)、仙骨傾斜角(SS)、骨盤回旋角(PT)、骨盤形態角(PI)を用いて評価されることが多い。
理想的な体幹矢状面バランスはSVAが50㎜以下であるとされている。それぞれの隣接脊椎は正の相関関係にあり、各々の湾曲変化は鎖のように影響しあって体幹バランスを維持している。
脊椎アライメントが股関節に与える影響
冠状面では、側彎症などで体幹の重心線が左右いずれかに変位している場合、偏位した側の股関節への負担が増大する。
脊椎アライメントが変化した場合、仮に重心線が股関節の前方を通ると合力が正常体重の0.6倍なのが3.1倍に増大して股関節への負担を増大させます。
また加齢により骨盤後傾が生じると寛骨臼前方被覆(股関節の覆い)が減少し、単位面積あたりの負荷が増大します。
いずれの場合も変形性股関節症を発生させる機序と言われています。
とはいえ股関節に何かの疾患の既往がある場合では疼痛等を回避しようとして反対に骨盤は前傾します。
腰椎は前弯増強が多く見られます。
これは被覆という観点としては有効に働きます。
しかし、腰椎前弯の増強による椎間関節亜脱臼、椎間孔狭小による腰痛や神経根症状(痺れなど)を生じることもあります。
そのためその代償が合理的に働いているか否かを注意深く見極め、治療展開していく必要があります。