リハビリに関わる人ならバランスがどうのこうのと患者に同業者に話をした方があるかと思います。
しかし、バランスとは何かを説明するのは簡単なようでかなり難しいと僕は思います。
様々な事が関わり合っているからです。
そのためその一助となれるように文献から引っ張ってまとめてみました。
はじめに
バランスは理学療法士にとって使用頻度が高い用語であるが、明確に表現しようとすると戸惑うことが多い用語でもある。
姿勢 姿勢調整
立ち直り反応 平衡反応
平衡機能
ここでは、バランスおよび関連する用語について、なるべく多くの理学療法士が同意できることを念頭に整理してみたい。
バランス
私たちの身体は重力の影響下にあり、常に重力方向に引かれている。
また私たちの身体は一塊りの硬い構造ではなく、四肢や頭部、体幹などの身体部位からなる分節構造をとっている。
このことに対応して、外部から観察される身体のありさまである姿勢は、身体と重力方向の関係を示す体位と、身体各部位の位置関係を示す構えの2つから記述される。
運動は姿勢の連続的な変化として捉えることもでき、姿勢は身体運動を考える際の基本になる。
通常の意味でバランスがいいことは、綱渡りや体操の平均台の演技に見てとれるように、転倒せず安定して姿勢保持や運動を遂行できることを指しており、そのためには身体各部位の配列を適切に調節しなくてはならない。
姿勢調節
姿勢保持や運動時に身体各部位を適切な位置関係に調節する働きを姿勢調節という。姿勢調節には姿勢や運動を目標に向かって方向付ける働きと、姿勢や運動の安定性を保証する働きがある。
バランスは姿勢調節における後者の働きを指している。
姿勢調節は筋力、関節の可動性、視覚、前庭感覚、体性感覚、小脳機能などの多くの身体要索によって機能し、運動する環境や心理状態などによっても影響される。
身体各部位の質量分布の中心を通り重力方向に平行な直線を身体重心線といい、重力対して身体を支える面を支持基底面という、姿勢を保持するためには重力に抗して身体各分節を支えるための筋出力と、身体が倒れないように重心線が支持基底面内に収まっていることが必要である。
さらに重心線が支持基底面の中央付近にあるほうが、重心線が支持基底面から外れにくく転倒しにくい。
バランス能力とは重心線を支持基底面内に収める身体能力である。
重心線が支持基底面内に収まっていることがバランスの要件になる。
運動の場合は重心線が支持基底面から外れるが、運動中に姿勢が崩れず転倒にないためには、時間的に変化する一定の範囲内に重心線を収めなければならない。
この時間的に変化する一定の範囲を動的な支持基底面として支持基底面の概念を拡張すると、重心線は常に揺らいでおり、バランスは重心線の動揺の程度と支持基底面の大きさから決まる確率的な過程とも考えられる。
立ち直り反応・平衡反応
立ち直り反応や平衡反応は、一定の刺激に対する身体の定型的な反応様式で、バランスに必要な身体反応要素と捉えることができる。
立ち直り反応には、迷路から起こる立ち直り(重力方向に頭部に定位させる)、身体から起こる頭部の立ち直り(体幹に対して頭部の向きを定位させる)、視覚から起こる立ち直り(視覚情報に合わせて頭部を定位させる)などがある。
立ち直り反応は何らかの情報をもとに、重力方向や体軸などを基準に頭部や体幹の方向を定位させる身体反応である。平衡反応には、身体各部位の配置が乱れた時にその乱れを再調整して転倒を防ぐ働きと、下肢のステップ反応や上肢の保護伸展反応のように新たな支持基底面をつくり転倒を防ぐ働きを両者が含まれる。
立ち直り反応は、身体各部位の配置を再調整する1つの反応様式として、平衡反応の要素に含まれることもある。平衡機能は狭義には前庭系を中心とする姿勢調節機能を指すことがあるが、広義にはバランス(機能)と同義としてよいだろう。
バランスの解釈として
「バランスは姿勢調節における安定性に着目した概念で、一定の支持基底面内に重心線を収めることがその要件になり、姿勢調節に関わる多くの要素によって達成されるもの」が妥当ではないかと考えている。