リハビリテーション

「早期変形性膝関節症における装具療法&運動療法」文献抄読

今回は変形性膝関節症の装具&運動療法についての二つの文献について簡単にまとめました。サラサラと読めると思いますのでぜひ目を通してください。

変形性膝関節症の治療法

変形性膝関節症の治療法は手術療法保存療法があります。

手術療法は主に進行例、症状の重い例に適用されます。
それに対して保存療法は早期から進行期に至るまで幅広く第1選択として適用されます。

よって変形性膝関節症の早期段階では、より保存療法の比重は大きくなります

保存療法とは?

主に痛みの緩和を目的とした薬物療法物理療法(電気治療など)、筋力強化などによる機能改善から症状の改善と進行予防を図る運動療法、そして装具療法が挙げられます。

変形性膝関節症の装具療法の効果は?

装着そのものによる症状の緩和だけでなく、運動におけるメカニカルストレス(体内の組織に圧縮や捻じれなどの物理的な力が加わること)や変形性関節症に関与する外側スラストといった異常運動を抑制し進行を予防するという点でも期待されます。

膝装具にはどんなものがあるの?

膝硬性装具

大腿部(太もも)および下腿部(すね)にストラップ固定される装具で、膝の内外側の継手によって屈曲伸展(曲げ伸ばし)は許容されるが、側方への動きは制御されます。

硬性装具の効果は、力学的負荷を減らすことで患者さんの不安定性の認識と痛みを改善することにあります。

骨折などの手術後に用いられる装具でギプスに準ずるものであり、変形性膝関節症で用いることは少ないです。

膝軟性装具

伸縮性素材で膝全体を包むもので支持性、拘束性を向上させる目的でバンドや支柱がオプションとしてつけられているものもあります。一般的に市販されている膝サポーターもこれに含まれます。
硬性装具と比較して支持性は劣るが安価なものが多く、装着が容易であることから変形性膝関節症に対して広く用いられています

軟性装具の疼痛緩和効果には、関節の固有感覚・位置覚の向上などが関与する可能性が報告されており、作用機序は明確ではありませんが、装着による安心感などの心理的要因、保温効果などの生体力学的な要因以外が疼痛緩和に効果をもたらしている可能性があります。

軟性装具の生体力学的な根拠は乏しいものであり、硬性装具に比べて限定的です

外側楔状型足底板

足底外側を楔状に高くする装具です。バンド固定し足部に装着するタイプが一般的です。
楔の高さは7~10mm、角度は5°程度とする報告が多く、16mm、10°の高さ・角度では不快感が強いとの報告があります。
荷重負荷が加わった際、足部の柔軟性がある人に対しては有効であると考えられます。

早期ほど疼痛改善の効果が期待できるとの報告やスラスト運動の低減効果もあるとの報告はありますが一定の見解はなく、変形性関節症の進行を予防するというエビデンスは明らかではありません

運動療法の必要性について

変形性膝関節症は生活習慣病、心血管イベント、糖尿病との関連が報告されており、予防として中年期からの対策が重要です。

OsteoArthritis Research Society International(OARSI)による変形性膝関節症のNon-surgical managementのガイドラインに示されているCore treatmentsとして、運動療法(水中運動を含む)、体重管理、筋力増強運動、自己管理と教育が推奨されています

早期変形性膝関節症の状態から、運動療法を中心としたコア治療を行うことが予防につながると予想され、構造的な変化(O脚変形など)が生じる前の介入が重要とされています。

早期変形性膝関節症の歩行時バイオメカニクス

早期変形性膝関節症の対象が主に中高年期からであることを考えると、メタボリックシンドロームの予防を含めウォーキングに代表される有酸素運動を応用することは重要な視点となります。

歩行時の外部膝関節内転(内反)モーメント(knee adduction moment;KAM)は、膝関節内側圧縮力の代替指標とされ変形性膝関節症の進行と関連します
KAMに関する研究では、早期変形性膝関節症症例においてはKAMの上昇が起きていないと報告されています。

早期変形性膝関節症から変形性関節症が進行して構造的な変化が生じた後にKAMが上昇すると考察されており、早期変形性膝関節症の時期からメカニカルストレスの軽減を図り、変形の進行を予防することが重要と考えられます

歩行再トレーニング

KAMを減少させる歩行を習得する再トレーニングとして今回勉強会で使用した資料には、健常成人に対してナンバ歩行とドローイン歩行を実施した研究が紹介されていました。

①ナンバ歩行

着物を着た状態で歩行するように手を前後に振らず振り出した足に体重を乗せていく歩行です。ここでは両手を鼠径部(股関節の付け根)に当てて歩行していました。
通常歩行と比較して前半ピークKAMが11%減少することを報告しています。

②ドローイン歩行

腹部深層筋の収縮である腹部引き込み運動(ドローイン)を維持して歩行することで前半ピークKAMが6%減少することを報告しています。

歩行再トレーニングは、歩行様式を変えることで、その後も負荷軽減の持続が期待されるため、症状の少ない状態で運動療法として継続することができると予想されます。
ナンバ歩行と比較してドローイン歩行は日常生活の中でも取り入れやすい方法ではないかと思います。

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