●はじめに
上腕骨外側上顆炎は下図のように肘を伸ばし、手のひらを下にした状態で物を持ったり、手首を反らせることが日常生活で多いと起こりやすいです。
上記のような動きでなぜ痛みが出やすいのかをエコー(超音波)を用いながら筋肉・関節の動きを観察します。
上腕骨外側上顆炎とは?
上腕骨外側上顆炎とは『テニス肘』ともいわれ、スポーツや日常生活で手首をよく 使う方に生じます。
下図のように肘の外側には手首を上に反らせる筋肉が付着しており、使いすぎにより炎症が起こることで痛みが出現します。
手首をそらせる筋肉はたくさんありますが、その中でも短橈側手根伸筋という一番骨の近くにある筋肉が原因と言われています。
手術ではなくリハビリテーションや物理療法など、保存療法が適応となることが多いです。
短橈側手根伸筋の特徴
- 骨への付着部が筋繊維でなく、ほぼ腱繊維のみになっています。上の図で見ると茶色は筋繊維、白色は腱繊維です。腱繊維は血流が悪く、治りにくいです。
- 手のひらを下に向ける(前腕回内)、肘を伸ばす(肘伸展)動きで筋肉が圧迫されダメージを受けやすいです。
手のひらを下に向けると内側から骨により圧迫を受けます。また、肘を伸ばすと長橈側手根伸筋という上に位置する筋肉に圧迫され負荷がかかります。このように内側、外側から圧力が強くなった状態で筋肉を使いすぎることで炎症が起こり痛みを生じます。
リハビリテーション
(※以下のリハビリテーションの内容は実際に上腕骨外側上顆炎の患者様へ行った一例になります。)
- 前腕の外側の筋肉(手首を上に反らせる筋肉)のマッサージ・ストレッチ
- 上腕の前面の筋肉(肘を曲げる筋肉)のストレッチ
- 小指側で握りながら手首を反らせる練習
炎症が起こりやすい短橈側手根伸筋は手首を親指側に横に曲げる動きで収縮が入ります。
小指側で握りながら手首を反らせることで短橈側手根伸筋を使わずに手首を反らせることを学習します。 - 生活指導
肘を伸ばした状態や手のひらを下に向けた状態で物を持つ動作を控えることが重要です。
投薬治療
外側上顆炎の治療にはトリアムシノロンというステロイド注射が用いられます。ステロイド注射は炎症を抑え痛みを和らげる効果があります。しかし、短期的には有効性が証明されていますが、長期的には有効性はないといわれています。
下図は再発率を現したもので、初回注射後に疼痛が再発し2回目の注射を打った割合が54%、3回目は50%、4回目は29%、5回目は80%とされています。したがって3回目までは効果が見られましたが、4回目以降は8割の方が再発していることになります。
ステロイド注射後24時間は疼痛が増悪し、3日以後になると優位に減少するといわれています。また、合併症として注射により筋や腱の断裂、皮膚の色素沈着、注射部位の痛み、顔面紅潮などがあります。
さいごに
今回は上腕骨外側上顆炎について学び、まとめていきました。
上腕骨外側上顆炎がどのような動作で起こりやすいのか、超音波を用いることで視覚的に理解を深めることができました。注射を打つことで疼痛が緩和されますが再発することも多く、根本的な解決のためには筋肉の柔軟性を高めることや、関節の動きをよくすること、日常生活での手の使い方を見直すことが重要です。