今回は下腿骨折後やプレート固定術後に見られる,足関節の可動域制限の原因になることのある,ケーラー脂肪体についてまとめていきたいと思います。
皆さんは足関節の可動域制限に対してアプローチすることも多いかと思います。
よく見られるのが足関節背底屈制限!新人の頃は単純にアキレス腱(下腿三頭筋)と考え,ストレッチしていませんでしたか?
今一度,よく見る関節・筋から目を逸らし新しい可能性についても考えて,視野を広げていけるように一緒になっていきましょう。
ケーラー脂肪体(Kager’s fat pad)とは
ケーラー脂肪体とは、アキレス腱の深部から長母趾屈筋の表層、踵骨近位部の隙間に存在しています。
ビジブルボディなど解剖図で見ると空白になっていることが多いですが,そこに脂肪体が存在しています。
今回は区画によって塗り分けていますが,3つを合わせてケーラー脂肪体(Kager’s fat pad)です。
ケーラー(ズ)ファットパッドと呼ぶこともあります。
ケーラー脂肪体は3つの領域に分かれています。
赤:長母趾屈筋関連領域区画
青:アキレス腱関連領域区画
黄:踵骨滑液包ウェッジ区画
4つの機能
ケーラー脂肪体には様々な機能があります。大きく分けて4つあります。
- 後脛骨動静脈と脛骨神経の保護
- アキレス腱、長母趾屈筋の滑走性の維持
- アキレス腱下、アキレス腱付着部の圧縮力の軽減
- retrocalcaneal bursa(後踵骨滑液包)の内圧調整と摩擦軽減
このように様々な機能がありますが、基本的にはアキレス腱などの周囲組織の滑走性に寄与したり、メカニカルストレスの軽減に関わっています。
拘縮することによっての影響
ケーラー脂肪体は機能が多くあるため、このケーラー脂肪体が拘縮すると様々な影響が出現します。
具体的な例えとしては、以下のような影響が出てきます。
- 足関節背屈
- 底屈時のアキレス腱の滑走性の低下(足関節の可動域制限)
- 下腿三頭筋や長母趾屈筋の滑走性低下(特に足関節背屈制限)
- アキレス腱付着部へのストレス増大
- retrocalcaneal bursaの炎症
- アキレス腱の痛み
リハビリ場面では、ケーラー脂肪体が拘縮するとアキレス腱・長母趾屈筋の動きが悪くなるため、足関節の可動域制限や痛みが生じてくるケースが非常に多いです。
足底筋膜炎(長期化),足関節内反捻挫後、外傷後のギプス固定除去後、アキレス腱炎,下腿遠位端骨折術後などの多くの疾患で、このケーラー脂肪体の拘縮・柔軟性低下が影響していると感じています。
臨床でも下腿〜足部のアライメントが崩れている人などは,アキレス腱の深層部を触ると、硬く動きが少なくなっていることが多い印象です。
そしてこの部分をしっかりとリリースしていくと、足関節の可動域制限が改善するケースは非常に多いです。
ケーラー脂肪体のリハビリ【評価と治療】
ケーラー脂肪体に関しては、評価と治療がほぼ同じ方法になってきます。
- 臥位に患者さんになってもたい、足部をフリーにします。プラットフォームから足関節を出して力を抜きます。
- アキレス腱の奥をつまむようにして握ってみてください。
- 健側と患側の差を比較しながら硬さをチェックしてみると、患側の方が硬いことがわかると思います。
アキレス腱の深部からアキレス腱パート、長母趾屈筋パートと別れているので、アキレス腱の深層から長母趾屈筋の表層まで深さを変えながら触り分けていきます。
左右からの圧迫で硬さがあり、側方への動きに制限があれば、ケーラー脂肪体の柔軟性低下があると判断します。
ケーラー脂肪体は摩擦刺激で柔軟性が改善するため、治療に関しても評価と同じように硬い部分を中心に左右からの圧迫を繰り返し解していきます。
また,左右から圧迫しながら,足関節を底背屈運動を繰り返していきましょう。
それぞれ役割が違うので、3つの領域を意識してリリースしてあげることで足関節の機能を引き出すことができます。
ケーラー脂肪体が底屈最終域で壁になっているか
ケーラー脂肪体が底屈最終域で踵骨の動きを制限する壁になっているかどうか確認しておきましょ。
確認しにくい場合は、足関節の前面の組織が張っていないのに制限が起きている場合もケーラー脂肪体が原因となっている可能性があります。