リハビリテーション

「筋スパズム」理学療法関連用語~正しく理解しよう~

筋スパズムは統一した定義がなされているとは言い難いが、神経学の分野では筋攣縮と呼ばれ、「断続的に生じる一定の持続時間をもった異常な筋収縮状態」とされる。

理学療法の分野では「痛みなどに起因する局所的で持続的な筋緊張の亢進状態」を指すことが多い。

筋スパズムの原因

原因に関しては未だ不明な点が多く、「痛み原因説(内臓疾患による関連痛を含む)」、「筋・筋膜原因説」、「骨・関節・腱・靱帯の病理原因説」、「末梢神経の刺激・損傷・変性過程原因説」、これらの複合説などの諸説がある。

このうち、痛みが原因になりうることは実験的にも確認されている。

また、理論的には筋・靱帯などの関節構成体の損傷やストレスは脊髄反射を介して筋スパズムを発生させうるし、運動神経の持続的刺激や損傷も、運動神経最末端部からシナプス間隙に持続的にアセチルコリンが漏出することから、筋スパズムを発生させうる。

よってこれらすべての説は段階的では肯定的に考えることができ、外傷・疼痛・炎症・感染・不動・関節の変位・不合理な姿勢や運動などによって筋スパズムが発生することが考えられる。

 

筋スパズムの慢性化

比較的短期間にこれらの原因が改善すると、筋スパズムも消失する。

しかし慢性化すると循環不全による局所的な筋硬化や、筋短縮などによる可動域制限を引き起こす。

加えて、疼痛物質や疼痛感作物質が発生されることにより疼痛閾値が低下する。

このような状態になるとこれらの筋には日常的な収縮・伸張・圧迫によっても痛みが出現するようになり、さらに筋スパズムを増悪させる悪循環に陥る。

放置すると、これら一連の変化はその局所に留まることなく、反射性要因や筋連結要因などによって他分節の筋スパズムへと発展していく

そして長い期間のうちに徐々に全身性の変化へと進行し、さらに疼痛の持続や不動によって上位中枢の可逆的変化が生じて、より複雑化した病態に移行する可能性がある。

また、自立神経も筋紡錘の感度調節をしているので、肉体的・精神的ストレスや情動反応により影響を受けて筋スパズムが生じたり、これが修飾されることがある。

これは筋スパズムが疼痛の持続に対する情動反応や、治療者と患者との関係などにも影響を受けることを意味する。

筋スパズム状態が続くと、その筋の特定部位にトリガーポイントと呼ばれるかなり過敏になった箇所が発生することがある。

トリガーポイントを圧迫すると圧迫部位に強烈な圧痛を示すほか、特有の関連痛を引き起こす。

このような状態を筋筋膜性疼痛症候群と呼ぶ。

トリガーポイントは他に皮膚・脂肪組織・腱・靱帯・関節包・骨膜にも存在することがあるが、筋筋膜内のトリガーポイントとは違って特定の場所ではなく、関連痛も生じない。

 

筋スパズムに対する治療

筋スパズムは一時的な軽減や消失があっても、原因が残存する限り再出現する。

よって、治療はその原因に対して直接行うことが望ましい。

まず患者との関係を良好に保ちながら、疼痛の管理を十分にすることが重要である。

そのうえで病態が複雑化する前に、可及的速やかに原因となっている損傷・炎症・関節変位などの改善を図りながら肢節の運動性回復を目指す必要がある。

特定部位にストレスが集中するような不合理な姿勢や動作があれば、この方略を改善すべく運動学習を展開する必要がある。

複雑化した場合の原因特定は困難を極めるが、病態・症候・機能不全などから症例がたどってきた道のりを推論して治療することが大切となる。

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